中華料理店『保昌(ほしょう)』店主
鄭 偉強(ていいきょう)様
開店から今年(2019年取材当時)で50周年を迎える横浜中華街にある中華料理店「保昌」店主 鄭偉強(ていいきょう)さん。
父親の代から引き継いだ今も、お客様にとって【おいしい!】と感じる中華料理の神髄を求め、研鑽を続けています。
50年前といえば、今の中華がまだ形になっていない時代で、周囲には店舗も少なく、中華料理店としては「保昌」だけにも関わらず、父親の味のファンがたくさん店に来てくれていました。子どもながらに「親父、かっこいいなぁ」と思っていました。僕が小さい頃は、今みたいに従業員もいなくて、休日でも父親が店で仕込みなどしていたのを今でも覚えています。何ができるわけではないですが、「大変そうだから、手伝おう」と店について行ったこともありました。思えば、その頃から父親の背を追っていたような気がします。
そんな父親の背中を見て育ち、高校卒業と同時に中華料理の世界へ足を踏み入れ、東京の中華料理店で下積みを始めました。技術を手取り足取り教えてくれるわけではないので、シェフの動きを盗むことに集中しました。
その後、父親の呼びかけで「保昌」に戻るのですが、いざ父親の腕を目のあたりにすると、自分はまだまだ料理の腕前もレパートリーも足りないと思い、他店の味を研究したり、中華料理以外の料理を食べたりして勉強を続けました。
でも、やっぱり父親の味が一番で、最高のシェフの下で修業ができたのは、何にも勝る経験で、それが今にもつながっています。
中華料理は、ご存知の通り、広東・北京・上海・四川といくつか種類があって、「保昌」は広東料理専門です。広東料理は、温暖な気候を利用したフルーツや野菜作りが盛んなので、それらを生かした甘酸っぱい味付けの酢豚が有名です。その他にもツバメの巣、ふかひれ、アワビなどの高級食材も多く使うので、味のベースとして、風味のしっかりとしたオイスターソースをよく使います。
オイスターソースは、どれでもよいわけではなく、「ソースの中にカキ油がどのくらい含まれているか」「風味がどれだけあるか」が肝心です。それが味の良し悪しを決めるため、お店の味と合う調味料を探すのには結構苦労します。
それまでは、他社のオイスターソースを使っていたのですが、ある時、父親が富士食品のオイスターソースを試したところ、「これはいい!」となり、すぐにお店でも使い始めました。お客様からの反応も「おいしい!」と上々で、同業者からの問い合わせもたくさんありました。
富士食品のオイスターソースの魅力は何といっても香り!広東料理は香りも命なので、五目焼きそば、アワビのステーキ、ふかひれスープをはじめ、メニューの9割には使っています。
醤油だけでは深みが出ないし、塩だけでは味気ないというときに、味のベースとしてだけでなく、仕上げにも使え、味をグレードアップしてくれる存在です。
昭和の時代に父親が作り上げた味を私と弟で受け継ぎ、平成になってから「保昌」はさらにパワーアップしたと思います。まだもう少し自分も頑張るとして(笑)、これからは修行中の息子が味を引き継いでいってくれると思います。
いくら時代が流れようと、「保昌」にとって富士食品のオイスターソースは、何一つ変わらない絶対不可欠のパートナーです。